「てんかん」の手術・治療件数の全国病院ランキングです。厚生労働省のデータに基づいています。てんかん専門の医師がいる全国の病院が対象です。1位は静岡てんかん・神経医療センター、2位は国立精神・神経医療研究センター病院、3位は西新潟中央病院となっています。(大畑亮介)

手術・治療件数ランキング(全国トップ30)~2020年度実績

<出典>

順位 病院名 治療数
(うち手術数)
1位 国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター
(静岡市)

病院についての説明↓
2,380
(72)
2位 国立精神・神経医療研究センター病院
(東京都小平市)
691
(47)
3位 国立病院機構 西新潟中央病院
(新潟市)
566
(41)
4位 大阪市立総合医療センター
(大阪市)
454
(33)
5位 国立病院機構 長崎医療センター
(長崎県大村市)
385
(42)
6位 東京都立神経病院
(東京都府中市)
357
(25)
7位 大阪母子医療センター
(大阪府和泉市)
354
8位 東北大学病院
(宮城県仙台市)

名医:中里信和(てんかん科科長)ほか
251
(42)
9位 中村記念病院
(札幌市中央区)
243
10位 総合病院 聖隷浜松病院
(静岡県浜松市)
232
(57)
11位 TMGあさか医療センター
(埼玉県朝霞市)
222
(26)
12位 大阪大学医学部附属病院
(大阪府吹田市)
217
(37)
13位 兵庫県立尼崎総合医療センター
(兵庫県尼崎市)
211
14位 名古屋第二赤十字病院
(愛知県名古屋市)
199
15位 松戸市立総合医療センター
(千葉県松戸市)
194
16位 安城更生病院
(愛知県安城市)
189
17位 聖マリア病院
(福岡県久留米市)
187
18位 順心病院
(兵庫県加古川市)
183
19位 岡山大学病院
(岡山市)
180
(21)
20位 奈良県立医科大学附属病院
(奈良県橿原市)
176
(37)
21位 広島大学病院
(広島市)

名医:飯田幸治ほか
機能温存を重視したてんかん手術を提供し、焦点判断のための新たな手法・定位的頭蓋内脳波の導入にも取り組む。また、てんかん疾患啓発活動も長年行っている。
175
(23)
22位 自治医科大学附属病院
(栃木県下野市)

名医:川合謙介ほか
抗てんかん薬で止められないてんかん発作に対する外科治療、脳機能温存を重視した脳神経外科手術に取り組む。
174
(17)
23位 順天堂大学医学部附属順天堂医院
(東京都文京区)
173
(52)
福岡大学病院
(福岡市)
173
25位 仙台市立病院
(宮城県仙台市)
167
26位 千葉西総合病院
(千葉県松戸市)
161
27位 宇都宮病院
(栃木県宇都宮市)
160
28位 聖マリアンナ医科大学病院
(神奈川県川崎市)
159
(29)
29位 藤田医科大学病院
(愛知県豊明市)
157
岐阜県総合医療センター
(岐阜市)

静岡てんかん・神経医療センターとは

国立病院機構「静岡てんかん・神経医療センター」(静岡てんかん病院、静岡市)は、日本を代表するてんかん治療の基幹病院である。

乳児から高齢者まで全国各地の難治患者を受け入れている。

精密な診断や高度治療、リハビリケアから、治療法や治療薬などの研究、教育までを包括して担う。

てんかん患者を対象にした外科治療は1983年に開始された。

全国で年間500~600人以上が外科手術を受ける中、静岡てんかん病院ではその1割以上に当たる年間70人程度が手術を受けている。

病棟の1室には、センターが導入している「脳波ビデオ検査」用の薄型モニターが数十台並ぶ。

てんかんの症状は千差万別。診断を確定させるため、外科手術する部位を特定するためにも欠かせないという。

モニターには、脳波の波形とともに頭部に電極を付けた患者の様子が映し出されている。

実際に脳波に異常があった時に患者がどんな行動を起こすかを映像で確認して症状を患者本人に示したり、治療薬の選定に活用したりできる。

脳波に異常があればコンピューターが感知し、脳のどの部位に問題があるかモニターに表示される。

異常値を示した時の患者さんの様子も分かるという。

てんかんは患者自身がはっきりと発作の症状を自覚するケースが少ないという。

このため、静岡てんかん病院では、症状を特定できない患者や外科手術を予定する患者の脳波を看護師らが24時間チェックする態勢を整えている。

運転中の発作によるとみられる悲惨な交通事故も起こり、てんかんには負のイメージが先行しがち。

一般の人にもてんかんを理解してもらおうと毎年、専門医や看護師らを全国各地に派遣して市民講座を開き、正しい知識の普及にも努めている。(スナップアップ投資顧問

歴史・沿革

1926年3月、静岡市立静岡療養所として創設。1974年4月に国立療養所静岡東病院と改称。

1975年難病(てんかん)診療基幹施設に指定。

2001年に国立静岡病院と組織統合、国立療養所静岡神経医療センターとして開院。

2004年に独立行政法人化に伴い、名称が「国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター」に変更。

概要

▽406床

▽てんかんセンターの医師30人(うち専門医18人)、てんかん病棟担当の看護師83人

▽静岡市葵区漆山


【2014年実績】手術・治療件数ランキング

順位 病院名 手術数+処置数
1位 国立病院機構 長崎医療センター
(長崎県大村市)
337
2位 東北大学病院
(宮城県仙台市)
280
3位 大阪市立総合医療センター
(大阪市都島区)
243
4位 中村記念病院
(札幌市中央区)
232
5位 岐阜県総合医療センター
(岐阜市)
201
6位 総合病院 聖隷浜松病院
(静岡県浜松市)
184
7位 名古屋第二赤十字病院
(名古屋市昭和区)
167
大阪脳神経外科病院
(大阪府豊中市)
167
9位 京都大学医学部附属病院
(京都市)
165
10位 順天堂大学医学部附属順天堂医院
(東京都文京区)
158
11位 国立循環器病研究センター病院
(大阪府吹田市)
157
12位 東京都立墨東病院
(東京都墨田区)
155
13位 国保 松戸市立病院
(千葉県松戸市)
151
14位 東京女子医科大学病院
(東京都新宿区)
148
15位 名古屋掖済会病院
(名古屋市中川区)
147
浅ノ川総合病院
(石川県金沢市)
147
17位 済生会熊本病院
(熊本市)
144
18位 京都第二赤十字病院
(京都市)
142
19位 富永病院
(大阪市浪速区)
140
大阪府立病院機構 大阪府立母子保健総合医療センター
(大阪府和泉市)
140
21位 東京大学医学部附属病院
(東京都文京区)
138
22位 安城更生病院
(愛知県安城市)
135
公立陶生病院
(愛知県瀬戸市)
135
24位 神戸市立医療センター中央市民病院
(兵庫県神戸市)
134
25位 大阪大学医学部附属病院
(大阪府吹田市)
132
26位 順心病院
(兵庫県加古川市)
128
倉敷中央病院
(岡山県倉敷市)
128
28位 国立病院機構 四国こどもとおとなの医療センター
(香川県善通寺市)
126
29位 仙台市立病院
(宮城県仙台市)
124
30位 中部徳洲会病院
(沖縄市)
123
沖縄県立中部病院
(沖縄県うるま市)
123

てんかんとは

・てんかんとは、意識喪失および麻痺発作を主な症状とする疾患の総称である。性格変化や知能障害もむ含めて、てんかんと考える。

・脳波にてんかん特有の変化が見出される。

・真性てんかん(genuine epilepsy)は、素因意外に原因がわからないもので、特発性てんかん(idiopathic epilepsy)ともいう。

・症候性てんかんは、脳の器質的病変により起こり、形態学的変化が証明される場合をいう。

・てんかんの有病率は一般人口の0.3~0.5%、発症率は0.03~0.04%といわれ、約半数は、特発性てんかんである。

・大発作(grand mal)は全身性痙攣で、てんかん発作の定型である。意識喪失、転倒とともに全身の筋肉の強直痙攣(tonic seizures)が起こる。10~30秒して、間代痙攣(clonic seizures)に移行する。30~40秒で終わるが、口角から泡をふくことや自律神経症状(瞳孔散大、流涙、発汗など)が現われる。尿、大便の失禁なども起こる。覚醒後に発作中の記憶はなく、逆行健忘を示すこともある。

・欠神発作(absence seizures)は、小発作(pure petit mal)ともいわれ、前兆を欠き、短時間の意識喪失のみの発作である。談話中に急に会話が途切れたり、一瞬空虚な表情になって空間をみつめる程度で終わる。小児期に多く、青年期なって治癒する例が多い。

・てんかん患者は発作出現前から一定の性格特性をもち、てんかん病質性性格といわれる特徴がある。談話は回りくどく、迅遠で保続が現われる。丁寧で几帳面だが、物事にこだわりやすく、うたぐり深くなる。感情反応は激しく爆発的となる。性格変化が高度になると、反社会的行動なども現れある。

・発作の反復によって、脳皮質に広い範囲の器質性変化が起こると、痴呆化が進む。同時に感情鈍麻が起こり、人格の水準が低下し、人格荒廃に至ることもある。

・診断は、第一に発作の確認、さらに過呼吸試験、水試験、脳波などによる。

・治療は、症候性てんかんのある種のものは手術的にも治療が可能である。突発性てんかんの成功例は、側頭葉てんかんの場合ぐらいである。主として抗てんかん薬による薬物治療法による。

・経過は慢性である。約5%に自然治癒があるという。

〈引用文献〉病名・症候辞典 照林社